湖に浮かぶ白いボルボ。
まるで映画のワンシーンのようなその光景は、なぜか13日たった今も“現実”として残ったままです。
「JAFで引き上げればいいだけでしょ?」と思った方も多いはず。
でも、その裏には想像以上に入り組んだ理由がありました。
湖畔に人が集まるほど話題になった“あの事故車”。
いったい何が引き上げを難しくしているのか?
そして、なぜ今も沈んだままなのか?
この記事では、JAF対応の限界や放置の背景、引き上げが進まないワケなど、気になるポイントをわかりやすく解き明かしていきます。
JAFで対応できないって本当?
「湖に車が落ちたらJAFに頼めばよくない?」――こんな声、X(旧Twitter)やYahoo!知恵袋でたくさん見かけます。
たしかに、街中でタイヤがパンクしたとか、側溝に脱輪したとか、そういうトラブルならJAFは神対応してくれますよね。
でも――榛名湖のボルボは話がちがうんです。
まず、JAFの仕事は、基本的に地上のトラブル対応がメインです。
ただし、水上の救助も「提携している専門業者」経由で一部対応可能ではあります。
とはいえ今回のケースは、「湖に沈みかけているボルボをどうにかしてくれ」という超・特殊案件。
湖に重機を浮かべて引き上げるような、本格的な作業が必要なんです。
現場の状況も独特。
事故車は、榛名湖のボート乗り場からおよそ10メートル沖に流され、湖底に接地したまま、今もプカプカと“半沈”状態。
サイドガラスの半分が水面に出ているような、かなり微妙なバランスで浮かんでいます。
見た目はシュールそのもの。
白いボルボが、まるで水陸両用車のように浮かんでいる――そんな異様な光景です。
「大型のクレーンで引っこ抜けばいいじゃん!」
という意見もありますが、話はそう簡単じゃありません。
湖のまわりは急な傾斜地で、車を引き上げるには大型浮体クレーン(ラフター型)が必要。
でもそのためには、道路封鎖や仮設足場の準備が必要になり、一気に“公共工事レベル”の作業になります。
しかも一番のハードルは――その車が個人の私有財産であること。
ボルボは、60代の男性が運転していて、同乗者とともに救助されました。
人命にかかわるような緊急性はありません。
だからこそ、誰かが勝手に「引き上げよう」と思っても、持ち主の許可がないと動かせないんです。
たとえ沈んでいても、それは“勝手にいじっちゃいけない人のモノ”というわけです。
実際、SNSでバズってからというもの、「ボルボート」というあだ名がつき、観光地のような扱いに。
11月16日時点では、Googleマップにも「観光名所」っぽいタグがつき、人だかりができているとの目撃もあります。
中には、写真コンテストのノリで「ベストショット」を狙う人まで…。
完全に“観るもの”として定着してしまったせいで、「誰も片づけようとしない」という、皮肉な状況が生まれています。
しかも――このまま放置すれば、11月下旬には榛名湖が凍結してしまう可能性が高いんです。
そうなれば、次のチャンスは春までおあずけ。
さらに時間が経てば、オイルやガソリンが漏れ出して、水質に悪影響を及ぼすおそれも出てきます。
さて、「じゃあ誰がいつ動くの?」という疑問が出てきますよね。
それについては、次の見出しで詳しくご紹介します。
榛名湖のボルボが放置される理由
ボルボが湖に落ちたのは、11月3日のこと。
それから13日がたった今も、白い車体は湖の上に“ぷかっ”と浮かんだままです。
榛名湖のボルボ見に来た
ガチで沈んでるwww軽い観光地になってらww pic.twitter.com/CXCZkWxmv8
— ばみロク (@Bami_Cosworth86) November 9, 2025
SNSでは11月16日現在も、
「まだ浮いてんの!?」
といった投稿が次々にあがり、ちょっとした名物になっています。
榛名湖きた
話題のボルボを至近距離で確認してきた🤣 pic.twitter.com/P4EIrkifNu— りょうや (@TOCHIGI50ryouya) November 16, 2025
現地では、湖畔にスマホをかまえる人がひっきりなし。
11月15〜16の週末は特に混雑していて、Googleマップ上でも“観光名所”っぽい扱いに。
中には「700円ボートに乗らず、スマホだけで楽しめる新スポット」なんて声もあるほどです。
でも――そろそろ疑問に思いませんか?
「これ、なんで誰も片づけないの?」
理由のひとつは、お金の問題です。
湖に沈んだ車を引き上げるには、専門の重機を使った水上作業が必要。
場所によっては道路を一時封鎖したり、作業員の安全確保のために仮設の足場を組んだりと、かなり手間がかかります。
そのぶん、かかる費用もかなり高額。
引き上げの相場は、状況によって差はありますが50〜100万円超ともいわれています。
もし保険が「湖への転落」をカバーしていなかった場合、全額が自己負担。
実際、事故を起こした運転者は無傷で救助されたとされており、「命が助かっただけでもよかった…」と思っているタイミングでその請求が来たら、誰でもひるんでしまいます。
さらに面倒なのが、所有者と行政の関係です。
たとえば、所有者が特定できなかった場合や連絡が取れない場合、行政が「代わりに撤去」することもできます。
ただしこれは、行政代執行という法的手続きが必要で、すぐに動けるわけではありません。
まずは所有者を調べるところから始まり、もし不明だった場合には、公告(こうこく)と呼ばれる「公に知らせる手続き」がスタート。
この公告には2週間以上の期間が必要で、その後も各種手続きを経てからでないと、ようやく撤去作業に移れないのです。
トータルで1ヶ月以上かかるケースもざらにあります。
この間に、話題性だけがどんどん先行して――あの車は、もはや“片づける対象”ではなく、“見に行く対象”になってしまったのかもしれません。
似たような事例では、湖や池に車が落ちてから数ヶ月放置されたあと、ようやく引き上げられたケースもあります。
今回も、そうなる可能性は高いでしょう。
ただし心配なのは、時間との勝負という点です。
11月下旬になれば、榛名湖は一部が凍結する恐れがあります。
凍ってしまえば、引き上げ作業は春まで延期。
しかも、沈没が進むにつれてガソリンやオイルが湖に漏れ出し、ワカサギなどの生態系に悪影響を与える可能性も。
実際、釣り客からは「早く片づけてくれないと困る」との声も出始めています。
ネタや観光として楽しむのも今のうち。
自然の中に置き去りにされた機械が、静かに悪影響を広げる前に――誰かが本気で動くタイミングが、そろそろ来ているのかもしれません。
なぜ今も沈んだままなのか?
榛名湖に落ちたボルボが、いつまでも湖面にぷかぷか浮いている。
13日もたてば引き上げられてそうなものですが――いまだにそのまま。
なぜか?
実は、あれほど目立っていても、すぐに動ける人がいないんです。
あのボルボは、事故当日に60代の男性2人が乗っていたことがわかっています。
けがもなく無事に救助されたのは幸いですが、問題はそのあと。
所有者が特定されていても、本人が同意しないかぎり、警察も行政も勝手に撤去できません。
じゃあ本人が動けば?となりますが――ここで出てくるのが費用の壁。
湖の中から車を引き上げるには、重機や専門作業員の手配が必要です。
その金額、だいたい50万円から100万円以上。
もし保険でカバーされなければ、全額自己負担。
しかも、事故後の手続きや段取りも一筋縄ではいかず、つい後回しにしたくなるのも無理はありません。
そんな中で、SNSでは観光スポットみたいな空気も広がってきました。
2025.11.14 榛名山
榛名湖に沈む、水没ボルボをお目当てに🚗
その後は周辺を散策した後、
久々に榛名神社へ行って来ました!⛩️境内には飲食店やお土産屋さんもあり、
観光地としても楽しめます🛍️関東屈指のパワースポット✨
元気になりたい方はぜひお越しくださいね!😊 pic.twitter.com/h5lHMA2lzs
— taizo (@taizo_10zan) November 15, 2025
11月16日時点では、X(旧Twitter)に「新名所榛名湖ボルボ行ってきました爆笑」と写真付きで投稿する人も続出。
のんびりムードがますます加速しています。
榛名湖のボルボの件、どういう経緯でああなってるんやって調べようとしたら、Googleマップで観光名所として出てきて横転
しかも評価高いし pic.twitter.com/oIg9uw92JA— ふみ茶 (@humhkobu_cha) November 16, 2025
さらに現場は、湖の桟橋近くの岸から約10メートルの浅瀬。
タイヤが湖底に触れていると見られ、簡単そうに見えて実際には厄介な場所。
JAFでは対応しきれず、専用の浮体式クレーンが必要。
現場の地形的にも搬入が難しく、「すぐ引き上げ」はやっぱり無理があるみたいです。
一方で、季節はどんどん進んでいます。
11月16日現在、榛名湖周辺は紅葉の終盤で、見物客が集中する時期。
Googleマップでも「観光名所化」したような評価が上昇中です。
このままでは、凍結のタイミングに間に合わず、春まで“冬眠”する可能性も。
しかも沈没が進めば、ガソリンやオイルが湖に漏れ出し、ワカサギの生息環境を汚染するおそれもあります。
ワカサギ釣りは11月23日までがシーズンとされており、釣り人たちからは「早く撤去してほしい」との声も上がり始めています。
笑えるようで笑えない。
「話題性」と「手間の大きさ」がぶつかり合って、“止まったままの現実”が続いているのが現状です。
でも、この出来事はある意味で、現代社会の縮図なのかもしれません。
夜中の2時くらいに行ったのにめっちゃ人いて観光名所になってた榛名湖ボルボ pic.twitter.com/VWgAAgfYGj
— JIRO (@TH1_283) November 16, 2025
誰のせいとも言えない、でも誰も動かない。
コスト・法律・世間の空気――全部が複雑に絡みあって、解決が後回しになる。
榛名湖のボルボが放置されている理由は、そんな“絡みあった事情”の象徴のように感じられます。
- JAFでもすぐに対応できない
- 行政もすぐには動けない
- 所有者にも事情がある
だからといって、湖に沈んだままでいいはずがない。
白いボルボが浮かんでいるその姿は、ただの水没車ではなく、「責任と現実が沈んでいく日本の一瞬」なのかもしれません。




