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飲食店のバイトで鶏肉を水洗い?衛生的に本当に大丈夫?

 

「唐揚げ用の鶏肉をシンクで水洗いするよう言われた」

そんな指示に、戸惑いや不安を感じるのはもっともです。

特に飲食店の現場で、「これって本当に安全なの?」と感じたら、無視できませんよね。

調理前の食材洗浄には様々な考え方がありますが、実は“洗わないほうが安全”とされる理由があります。

本記事では、なぜ水洗いが問題なのか、飲食バイトとしてどう向き合えばよいのかを詳しく解説していきます。

鶏肉を水洗いするリスクとは?

 

鶏肉を水洗いするのは、逆に食中毒リスクを高める可能性があります。

一見、洗えばきれいになると思いがちですが、実はそれが落とし穴。

鶏肉の表面には、カンピロバクターという食中毒の原因菌が付着していることがあります。

水で洗うと、その菌がシンク周辺に飛び散り、近くの調理器具や食材を汚染する可能性があります。

特に今回のケースでは、ドリンクを扱う台や食器棚がシンクのすぐ隣や上にあるということでした。

つまり、「鶏肉の血を洗うつもりが、逆にお客さんの口に入る飲み物や器に菌を飛ばしてしまっている」ことになりかねません。

実際の研究によると、鶏肉を水洗いした場合、水しぶきが周囲50cm以上の範囲に広がることが確認されています。

その水滴にはカンピロバクターだけでなく、サルモネラ菌などの病原菌も含まれる可能性があり、1滴の水しぶきにも数百〜数千個の菌が含まれていることもあるのです。

また、生肉から出る血液や肉汁には高濃度のたんぱく質が含まれているため、これが調理場の表面に付着すると、単なる水拭きでは除去しきれない汚染源となってしまいます。

「昔からのやり方」には落とし穴がある

習慣化したやり方が正しいとは限りません。

飲食業界では

「昔からやっている」

「これで今まで大丈夫だった」という言葉をよく耳にします。

しかし、食中毒は衛生管理の不備で発生しやすく、たまたま起きていないだけの場合もあります。

見えない菌は、少量でも人体に影響を及ぼすため、過信は禁物です。

特に、加熱するとはいえ、準備段階で汚染が広がれば他の食材や器具に影響が出ます。

調理器具や手を介して他の食材に菌が移る「交差汚染」は、プロの厨房でも起きる問題です。

また、店長の「あとから綺麗にするから大丈夫」という考え方も、事後処理に過度な信頼を寄せすぎています。

拭き掃除や消毒では、飛沫のすべてを取り除けない可能性もあります。

 

食品衛生の知識は、近年科学的な研究に基づいて大きく進歩しています。

かつては「洗えば清潔になる」と考えられていたことが、実は「汚染を広げる原因になる」と判明したケースは少なくありません。

特に鶏肉の場合、表面に付着している菌の種類や量を考えると、旧来の習慣には見直すべき点が多いのです。

過去10年間の食中毒発生事例を分析してみると、依然として鶏肉が原因となる事例は多く、その多くが調理過程での交差汚染に起因しています。

つまり、「今まで大丈夫だった」と安心していても、実際には潜在的なリスクを抱えていた可能性が高いのです。

「水洗い不要」とされる科学的根拠

 

厚労省の衛生ガイドラインでも水洗いは推奨されていません。

厚生労働省の食品衛生ガイドラインでは、家庭や飲食店で

「鶏肉は水で洗わず、そのまま加熱すること」を推奨しています。

これは、以下の理由からです。

  • 水洗いで菌が落ちることはほとんどない
  • 飛沫によって菌が周囲に拡散する
  • しっかり加熱することで十分に安全が確保できる

たとえば、鶏肉の内部まで75℃で1分以上加熱することで、カンピロバクターなどの病原菌は死滅します。

つまり、「洗って菌を減らす」よりも、「火を通して菌を殺す」ほうがはるかに確実で安全ということです。

実験データによると、鶏肉を水洗いしても表面の菌数はわずか10〜20%程度しか減少しないことがわかっています。

一方で、適切な加熱調理を行うと99.9999%以上の菌を死滅させることができます。

この数字の差は非常に大きく、安全性の面で圧倒的な差があることを示しています。

また、日本だけでなく、米国疾病管理予防センター(CDC)や英国食品基準庁(FSA)、世界保健機関(WHO)なども同様に鶏肉の水洗いを推奨していません。

これは世界的な科学的コンセンサスとなっているのです。

現場での具体的なリスク

 

鶏肉の水洗いは複数の安全上の問題を引き起こします。

飲食店の厨房で鶏肉を洗う行為がどのようなリスクをもたらすのか、より具体的に考えてみましょう。

まず、シンクでの水洗い時に発生する微細な水滴は、目に見えない形で広範囲に飛散します。

この水滴には、次のようなリスクがあります。

  • 周辺の調理器具への汚染: まな板やボウル、トング、菜箸などに付着し、後に使用する際に他の食材を汚染する
  • 調理台やシェルフへの付着: 長時間生存可能なため、後に置かれる食材や完成品に移る
  • 調理スタッフの手や服への付着: 無意識のうちに体や服に付いた菌が、他の場所に移動する

特に深刻なのは、一度汚染が広がると、通常の清掃だけでは取り除けない点です。

消毒液による洗浄が必要ですが、忙しい現場では完璧に行うことは容易ではありません。

実際の食中毒事例を見ると、「加熱してあるから安全」と思われた料理でも、調理前の交差汚染が原因で食中毒を引き起こしたケースが数多く報告されています。

例えば、唐揚げを提供した店舗で食中毒が発生したある事例では、鶏肉を洗った際の飛沫が、調理済みの料理や付け合わせの野菜に付着したことが原因でした。

バイトとしてできる現実的な対応

安全意識を持ちつつ、無理せず現場にフィードバックを。

あなたが不安に感じたことは、正しく、安全意識の表れです。

とはいえ、バイトの立場で「やり方を変えてください」と強く言うのは難しいですよね。

現実的には、以下のような対応が考えられます。

  • 保健所の衛生マニュアルを軽く話題に出す:「今って洗わない方が安全って聞きました」など、雑談風に共有する
  • 衛生管理に関心のある同僚と情報共有:同じ思いの仲間がいれば、声を上げやすくなります
  • 気になる作業は日時や内容をメモに記録:後で店長や保健所に相談する際に役立ちます

最終的に改善するかどうかは店舗の判断ですが、

「大丈夫かな?」

という意識を持ち続けることが、職場全体の安全レベルを少しずつ引き上げていく力になります。

 

もし店舗のマニュアルや指示に疑問を感じる場合は、「なぜその方法が採用されているのか」を理解することも大切です。

例えば、

「鶏肉の見た目をよくするため」

「血の匂いを軽減するため」といった理由があるかもしれません。

そうした場合は、「洗わずに調理する方法」と「衛生リスクを最小限に抑えた洗い方」の両方について情報を集め、店長や先輩スタッフと建設的な会話ができるよう準備しておくと良いでしょう。

また、食品衛生責任者の資格を持つスタッフがいれば、その方に相談するのも一つの方法です。

多くの場合、正しい知識を持つスタッフは衛生管理の改善に前向きです。

鶏肉を扱う際の正しい方法

 

水洗いせず、専用の調理器具で扱うことが基本です。

では、鶏肉を安全に扱うためには、どのような方法が推奨されているのでしょうか。

  1. 専用の調理器具を使用する:鶏肉専用のまな板やトングを用意し、他の食材との交差汚染を防ぐ
  2. 手袋を着用する:使い捨て手袋を着用し、調理後すぐに廃棄する
  3. 調理の順序を考える:生肉→野菜→調理済み食品の順に作業せず、逆の順番で行う
  4. 適切な保管:鶏肉の肉汁が他の食材に垂れないよう、冷蔵庫の一番下の段に保管する
  5. 調理後の徹底消毒:鶏肉を扱った後の調理器具や作業台は、熱湯や適切な消毒剤で消毒する

もし店舗が「どうしても鶏肉を洗いたい」という場合は、以下のような代替案を提案することも考えられます。

  • 専用シンクを設け、他の調理と完全に分離する
  • 洗浄時は低水圧で、飛沫が飛ばないように注意深く行う
  • 洗浄後はシンク周辺を適切な消毒剤で完全に消毒する
  • 洗浄担当者は専用のエプロンと手袋を着用し、作業後に交換する

しかし、これらの対策を完全に実施することは現実的に難しく、やはり「洗わない」という選択が最も安全で簡単な方法であることに変わりはありません。

まとめ

飲食の現場では「火を通せば大丈夫」と思いがちですが、実際には調理前の扱いがとても重要です。

鶏肉の水洗いは、見た目はきれいに見えても、衛生的にはむしろリスクがあります。

店の慣習に違和感を覚えたら、それは”感覚が正しい”証拠。

無理に変えようとせず、まずは事実を知り、丁寧に共有していくことから始めてみてください。

食の安全は、お客様の健康を守るだけでなく、店舗の信頼と持続可能な経営にも直結する重要な問題です。

「今まで問題なかったから」

という考えではなく、常に最新の衛生知識を取り入れながら、より安全な調理環境を目指すことが、飲食業に携わる全ての人の責任ではないでしょうか。

あなたの「おかしいな?」という気づきが、お店全体の安全レベルを高める第一歩になるかもしれません。

安全意識を持ち続け、適切なタイミングで丁寧に伝えていくことで、きっと職場環境の改善につながるはずです。

konami

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