のどかな漁村が、一晩で“赤い海”に変わった――。
静かな夕暮れに起きた大分・佐賀関の大規模火災は、住宅170棟以上をのみこみました。
原因は一軒の民家、たったひとつの火元。
けれど、それだけでこれほどの被害になるものなのでしょうか。
実は、火を広げたのは“風”でも“建物”でもなく、私たちが普段見落としている「ある環境」だったのです。
火事のニュースを“どこか他人ごと”と感じてしまうあなたにこそ、知ってほしい。
次に燃えるのは、あなたの町かもしれません。
大分・佐賀関の火災の火元はどこ?
2025年11月18日の夕方、まだ空がうす明るい時間でした。
大分市の佐賀関(さがのせき)で「家がもえている!」という通報が入り、ここからすべてが始まります。
場所は、漁港のすぐそばにある古い家がならぶエリアです。
細いみちがつづき、家と家のあいだは手をのばせば届くほど。
人も少なく、高齢化率はおよそ40%。
のどかな町での火事でした。
火元とみられるのは、一軒の民家です。
焼けた家の中からは焼死体(76歳男性)がみつかりました。
現場の状況から、ストーブや電気まわりのトラブルがうたがわれていますが、くわしい原因はまだ調査中です。
大分県大規模火災
原因はなんだろう?
野焼き?
山火事?
まさか放火?
ただ、火はそこで止まりませんでした。
19日の朝には、なんと170棟以上が延焼。
東京ドーム3こ分をこえる広さが黒くこげ、火の手は山林にも入り、鎮火の見通しはまだ立っていません。
全国でも、住宅火災の原因の上位にくるのが暖房器具や電気のミスです。
大分県も同じで、住宅火災の約4分の1が暖房器具のトラブルによるもの。
「自分は大丈夫」と思ってしまいやすいところに、じつは落とし穴があります。
しかも今回は、風速10mをこえる強い風がふきつづけ、火のこがなんと1.4km先の無人島にまで飛んだのです。
気温が下がって空気がかわく季節と重なり、火は想像以上のスピードで広がりました。
町の人たちは着のみ着のまま避難し、いまも175人が避難所で一夜をすごしています。
消防車は50台以上が集まり、支援物資のよびかけも始まりました。
それでも、ひとつ気になることがあるはずです。
「たった1軒からどうしてこんな大ごとに…?」
つぎは、火がここまで広がった本当の理由に入っていきます。
170棟焼失…火がここまで広がったワケ
2025年11月18日。
大分・佐賀関の町に突如広がった炎は、170棟以上の建物をのみこみました。
そして、焼け跡から76歳男性の焼死体が発見され、とうとう死者も出ました。
いったいなぜ、火はここまで広がってしまったのか。
そこには、いくつもの“重なった悪条件”があったのです。
まずは、風の問題です。
この日は北東からの強い風が吹いており、風速は10メートルを超えていたといいます。
火の粉は風にあおられて舞い上がり、まるで息を吹きかけたマッチのように、一気に勢いを増しました。
しかも、佐賀関は三方を海に囲まれた半島の先端。
町は山と山に挟まれた“すり鉢状”の地形です。
この地形が風を巻き込み、煙突効果(熱と風が炎を上へ押し上げる現象)が発生。
火は真上へ駆け上がるようにして、一瞬で町を包みこみました。
火の粉は1.5キロ先の無人島(佐賀関沖)にまで飛び火し、そちらも燃え始めたほどです。
しかも、島にはまだ消防が入れていないとのことで、延焼の危険はつづいています。
つぎに、町の構造的な弱さが広がりを助けました。
古くからの木造住宅がぎっしりとならび、隣との距離は1〜2メートルほど。
そこに火がうつれば、まるでドミノ倒しのように燃え広がるのは時間の問題です。
道もせまくて、幅3〜4メートルほどの小道ばかり。
消防車は中まで入れず、ホースも建物のあいだをくねくね通す必要がありました。
初期消火が間に合わなければ、火は止まりません。
さらに、空き家の多さも見逃せません。
過疎化がすすむ佐賀関では、すでに空き家が多くなっています。
火がついてもすぐに気づく人がいないため、延焼スピードが加速する条件になってしまいました。
避難所では「昔は人が多かったのに、今は気づく人も少ない」と嘆く声も。
実際、今回の被害の半数近くは空き家だと見られていて、誰の目にもふれない“火の通り道”が町のなかにできていたのです。
そして、19日午後の時点でも火は完全にはおさまっていません。
鎮火のめどは立たず、東京ドーム3個分以上の面積が焼け、自衛隊にも災害派遣が要請されました。
ここまでの被害を生んだのは、ただの「人のミス」だけではありません。
風・地形・建物・人口減少・空き家。
そして、11月特有の乾燥気候が“火に油”を注ぎました。
避難所では175人以上が不安な夜をすごしており、近くの道の駅などでは募金箱の設置も始まっています。
「これ、もし自分の住む町だったら…?」
そんなふうに思わずにはいられない。
火災というのは、遠くで起きている誰かの不幸ではなく、身近な生活のひび割れから生まれる“社会の問題”なのかもしれません。
燃え広がる環境の罠
テレビでは「強風と乾燥が重なった」とサラッと片づけられていたこの火災。
でも実際には、もっと複雑で深い“燃え広がる条件”が揃っていたんです。
19日夕方現在も煙は立ちのぼり、自衛隊のヘリが空から消火中。
焼損は170棟以上、115世帯・175人が避難を余儀なくされ、270戸で停電が続いています。
現地には、消せない炎と同じくらいの“静かな不安”が広がっているのです。
佐賀関は、三方を海に囲まれた半島の先端で、山に挟まれたすり鉢状の町。
この地形が風の通り道を作り、炎を一気に加速させる舞台になってしまいました。
しかも、11月の乾いた空気。
落ち葉や枝は、乾いたティッシュのように一瞬で燃え広がります。
火の粉は、なんと約1.4km先の無人島(佐賀関沖)にまで飛び火。
消防車のサイレンが夜通し響き、朝まで続くヘリの音が町を包みました。
「まさか、うちの前があんなに赤くなるなんて…」
消防署の近くに住む人の声です。
煙の臭いで喘息の発作を起こしかけたという人もいました。
SNSでは、「予言的中?」と話題になったり、
「糸魚川の大火(2016年)と似てる」
「うちの町も木造密集地で他人事じゃない」
と、全国から不安や共感の声があふれています。
「うちも以前、油火災を起こしたことがあって…」
「うちのちょっと先が佐賀関。まさかこんなことになるとは」
そんなコメントが続々と届いています。
中には、「3.11の火災を思い出した」という声や、
「消火器を初めてちゃんと使ってみようと思った」という人も。
火の怖さが、他人事ではないことに気づいたきっかけになったのです。
今回の火災がここまで拡大した背景には、過去の大火と似た“気象条件”がありました。
強風、乾燥、木造の密集地…条件が重なれば、どの町でも起こりうる。
それが、この火災の怖さです。
さらに専門家は、「高齢化や空き家の増加で、初期消火が遅れた可能性が高い」と指摘しています。
佐賀関は過疎が進み、火の目撃が遅れる状況になっていたのです。
火災は、ただの「火の不始末」だけで起きるわけではありません。
町の構造・気象条件・人口の偏り――それらがすべて組み合わさったとき、火は「止まらない怪物」になります。
たった一軒の火元が、170棟以上を焼いた理由。
それは、私たちが見過ごしてきた「燃え広がる環境の罠」だったのです。
スマートシティ計画だった⁉
この火事、じつは“わざと燃やされた”なんて話がネットで出ているんです。
佐賀関の火災をめぐり、「スマートシティの再開発の邪魔だったから燃やされたのでは?」という投稿がXで拡散しました。
きっかけは、とある投稿者の言葉。
「スマートシティ計画の場所で火事…偶然とは思えない」
そんな意味深なひと言とともに、現場のスクショが貼られていました。
この投稿から火がついたように、“陰謀論モード”が加速。
さらには「佐賀関はスマートシティ化の候補地だった」と都市計画図を出してくる人もいました。
たしかに、大分市の都市マスタープランには、佐賀関エリアを含む開発構想があることは事実です。
でも、それと火災の直接の因果関係は確認されていません。
では、冷静に事実を確認しましょう。
出火原因はまだ特定されていませんが、ストーブや電気系統の事故が疑われています。
火が広がったのは、強風(最大瞬間風速10メートル以上)と、乾燥、すり鉢状の地形、密集する木造住宅が重なったため。
これは消防・気象庁も説明している内容です。
そして、19日夕方現在、焼損面積は約5ヘクタール(東京ドーム3.8個分)。
Xではマウイ島火災との類似を指摘する声も。
でも、専門家は「気候変動と過疎化が生んだ構造的災害」と指摘しており、科学的な根拠はそちらに軍配が上がっています。
“なんか怪しい”と感じるのも、情報があふれるいまの時代ならでは。
けれど、本当に大切なのは、現地でいま起きている現実を知り、少しでも力になれる行動を考えることではないでしょうか。




