2025年6月12日、インド・アーメダバードを離陸したばかりのエア・インディア171便が、市街地に墜落しました。
使用されていたのは、これまで致命的な事故を起こしたことのなかった「ボーイング787ドリームライナー」。
乗客乗員241人が命を落とすという惨事に、世界が震撼しています。
なぜ、最新鋭と信じられていた機体が突然空から落ちたのか?
離陸からわずか30秒で墜落に至った原因は何なのか?
本記事では、事故の経緯と指摘されている複数の原因、ボーイング787の安全性への影響などを、調査中の情報をもとにわかりやすく解説します。
2025年6月12日、インド西部グジャラート州アーメダバードで、エア・インディア171便が離陸直後に墜落するという衝撃的な事故が発生しました。
便名は「エア・インディア171便」、目的地はロンドン・ガトウィック。乗客230人、乗員12人の計242人が搭乗していました。
使用されていた機体はボーイング787-8型、いわゆる「ドリームライナー」。
2013年初飛行、2014年にエア・インディアに納入された機体で機齢は約12年。
この便は、2025年6月12日午後1時38分(現地時間)に離陸しましたが、わずか30秒後に高度約190メートルで急降下し、住宅地に墜落しました。
墜落現場は空港南南西のメグニナガル地区。
機体は医科大学の宿舎に直撃し、特に食堂部分に激突したことで、地上でも少なくとも8人が死亡、50人以上が負傷。
医学生や地元住民も巻き込まれました。
生存者は1人。
英国籍のラメシュ・ビシュワスクマル氏(40歳)が、非常口近くの11A席に座っていたことが幸いし、機体にできた隙間から自力で脱出。
軽傷で命を取り留めたと報じられています。
この事故が世界を驚かせた理由のひとつは、ボーイング787ドリームライナーが関係していたことです。
2011年の商用運航開始以来、約1,900機が納入されたボーイング787で、これが初の墜落事故となりました。
それまで大きな死亡事故や機体の全損(hull loss)は記録されておらず、今回はその安全記録を塗り替える形となってしまいました。
事故当時、現地の天候は風速3.6メートル、気温37度、視界6キロと、飛行に大きな支障がある状況ではなかったとされています。
天候が原因の可能性は低いと考えられています。
今回の出来事は、ボーイング787の安全性に対する疑問を投げかけるものとなりました。
機体トラブルなのか、操縦の問題なのか、それとも他に見落とされた要因があるのか――この先の調査結果が、航空業界に大きな示唆を与えることになるでしょう。
現在、事故の原因についてはインドの航空事故調査局(AAIB)が調査を進めていますが、現時点では明確な結論は出ていません。
ただし、一部の専門家や報道によると、以下のような仮説が浮上しています。
まず最初に注目されているのが、滑走路の使用距離不足の可能性です。
アーメダバード空港の滑走路は約3,500メートルありますが、報道によれば、事故機は滑走路の途中から離陸を開始した可能性があるとされています。
この場合、使用できた距離が大型ジェット機の離陸に必要な距離より短かったとみられ、加速や揚力の確保が不十分だった可能性があります。
次に指摘されているのが、フラップの操作ミスです。
通常、離陸時には主翼のフラップを下げることで、より多くの揚力を得るよう設計されています。
しかし、映像解析をもとにした専門家の意見では、フラップが適切に設定されていなかった可能性や、離陸直後に誤って収納された可能性があるとされています。
これにより、機体が必要な揚力を得られなかった可能性があります。
三つ目の仮説は、エンジンの出力喪失です。
事故機にはゼネラル・エレクトリック(GE)製のGEnxエンジンが2基搭載されていました。
さらに、補助動力装置であるラムエアタービン(RAT)が展開されていたことから、「エンジンが2基とも停止していた可能性がある」とも指摘されています。
通常、片方のエンジンが停止しても飛行は可能ですが、両方が止まるとパイロット側の対応は極めて難しくなるそうです。
離陸直後に「メーデー」信号が出された点も、「機体の深刻な不具合があったことを示している」としています。
さらに、ヒューマンエラーも否定できません。
元JAL機長の杉江弘氏は、「V1」と呼ばれる離陸決心速度の前に操縦桿を引いた可能性を指摘しています。
これは過去の航空事故でも見られた典型的な操縦ミスで、機首が不自然に上がると揚力を維持できず、急激に失速しやすくなります。
事故当時の映像でも、機体が機首上げの姿勢のまま突入していく様子が確認されており、この点と符合しています。
これらの要因が単独ではなく、複数が重なって事故に至った可能性が高いと考えられます。
つまり、1つの操作ミスや機械故障だけでなく、複数の要因が連鎖的に作用した“複合的な事故”の可能性が高いのです。
とはいえ、これらはすべて調査中の仮説に過ぎません。
今後、AAIBによる調査が進むことで、より具体的で信頼性のある原因が明らかになることが期待されます。
今回の事故を「ボーイング787が初めて墜落した」とだけ捉えるのは表面的かもしれません。
その背景には、航空機の構造、運用体制、そして人間の判断といった複雑な要素が絡んでいる可能性があります。
まず重要なのは、「これまで安全とされていた機体が、なぜ突然落ちたのか」という疑問です。
ボーイング787は2011年に商用運航を開始し、これまでに約1,900機が世界中に納入されています。
長年にわたり深刻な墜落事故を起こすことなく飛び続けてきた機体が、今回初めて墜落事故を起こしたという事実は、関係者に大きな衝撃を与えました。
一部報道では、ボーイングの製造過程に関する懸念が過去に内部告発されたとされていますが、今回の事故との直接的な関連は現時点で不明です。
あくまで背景情報の一つとして捉える必要があります。
また、一部報道や専門家の分析では、滑走路の使用距離不足、離陸手順、フラップの操作に問題があった可能性が指摘されています。
これらの要素が適切でなかった場合、機体が必要な揚力や速度を得られず、安定した離陸が困難になった可能性があります。
さらに、エンジンに異常が生じた可能性も考えられます。
普通は、離陸したら車輪は収納されます。
でも、映像をみると車輪は出たままなんですよね。
出力が低下したり、油圧系統に問題が起きれば、操縦に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
そして、限られた時間内でのパイロットの判断や対応も、結果を左右する重要な要素です。
航空機事故の多くは、単一の原因ではなく、複数の要因が連鎖的に作用することで発生します。
今回も、滑走路の使用、フラップの設定、エンジンの出力、操縦判断など、それぞれがわずかにズレ、連鎖的に重なった結果、事故という最悪の事態に至った可能性があります。
そして何より、これらの要因が「離陸からわずか30秒」という極めて短い時間の中で噴き出したことに、現代航空の複雑さと脆さが現れています。
航空業界は、極めて高い安全性が求められ、わずかなミスも許されない世界です。
この事故は、技術面だけでなく運用体制や判断プロセスも含めて、改めて見直すきっかけとなるでしょう。
今後の調査結果が、私たちにどのような教訓をもたらすのか――それが注目されています。
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