2026年2月、人気ウェブ漫画『堕天作戦』の作者・山本章一氏による教え子への性加害が、札幌地裁の判決によって明らかになりました。

15歳の少女に排泄物を食べさせる、体に「奴隷」と書いて撮影する――判決で認定された行為の異常さは、すでに多くの方がご存じかと思います。

しかし、この事件にはもうひとつ、見過ごせない問題があるんです。

それは、山本氏の作品を連載していた小学館が、事件をどこまで知っていて、何をしたのかという疑惑。

調べていくと出てきたのは、編集者が加害者と被害者の間に入って和解を仲介していた形跡、150万円で被害者を黙らせようとした交渉記録、そして判決後も続く不可解な沈黙でした。

他の出版社なら即座に連載を打ち切っている――そんな事例と比較すると、小学館の対応は際立って異質に映ります。

今回は、この「出版社の責任」という角度から、時系列に沿って疑惑の全体像を追いかけてみたいと思います。

漫画家・山本章一と小学館の関係

まず、出版社の問題に入る前に、事件の概要だけ簡潔に押さえておきます。

2026年2月20日、札幌地裁は山本章一氏(50代・本名は栗田和明とも報じられている)に対し、元教え子の女性への性的加害で1100万円の損害賠償を命じました。

山本氏は北海道芸術高校(通信制)でデッサン講師を務めながら、漫画家としても活動していた人物。

2016年、当時15歳だった女子生徒に「漫画の話をしてあげる」と接近し、約3年にわたって性的加害を繰り返したと認定されています。

 

裁判所が認定した行為は凄惨の一言で、排泄物の摂取強要、体への「奴隷」落書きと撮影、屋外での裸歩行強要など、およそ「おしおき」という言葉で正当化できるものではありませんでした。

被害女性は解離性同一性障害(DID)とPTSDを発症し、大学を中退。

さらに山本氏は2020年2月頃、児童ポルノの作成・所持で罰金30万円の有罪判決を受けていたことも明らかになっています。

この事件の詳細については別の記事で詳しく書いていますので、ここからはこの記事の本題である「小学館は何を知っていて、何をしたのか」に絞って掘り下げていきます。

堕天作戦「休載」から「連載終了」までの裏側

ここからが核心です。

まずは公式に発表された事実と、判決後にリークされた情報を時系列で並べてみます。

表に出ていた話と、裏で動いていた話のギャップに、きっと驚くのではないでしょうか。

2020年2月:突然の休載

『堕天作戦』は2015年に小学館のマンガワン・裏サンデーで連載を開始し、WEB漫画総選挙2019で3位を獲得するほどの人気作品でした。

ところが2020年2月頃、山本氏は「体調不良」を理由に休載に入ります。

ファンは「先生大丈夫かな」「早く元気になって」と心配の声を寄せていました。

 

しかし判決後に明らかになった情報によると、この時期は山本氏が児童ポルノ事件で有罪判決を受けた時期と完全に一致しています。

被害女性が警察に相談したことがきっかけのひとつとされ、逮捕・勾留されていた可能性も示唆されている。

つまりファンが「体調不良」と聞かされていた裏では、まったく別のことが起きていた可能性が高いわけです。

この時点で、小学館の編集部が事情を把握していたのかどうか。

ここが最初の疑問点になります。

 

2021年5月:LINEグループでの和解交渉

時系列の中で最も決定的な出来事が、ここで起きています。

リーク判決文やネット上の解説によると、2021年5月27日、ひとつのLINEグループが作成されました。

参加者は3人。

被害女性、山本章一氏、そして小学館マンガワン編集部の担当編集者・成田卓哉氏

このグループで成田氏が提案した和解条件は、以下のようなものだったとされています。

山本氏が被害女性に150万円を即日支払う(公正証書作成後1営業日以内)。

被害女性は休載理由を公表しないことに同意する。

守秘義務と接触禁止を公正証書で取り決める。

その上で、連載を再開させる

ちょっと立ち止まって考えてほしいんです。

この提案の構造を。

性加害の被害者に対して、150万円と引き換えに沈黙を求め、加害者の漫画連載を再開させる。

そしてこの提案を持ちかけたのは、加害者本人ではなく、出版社の編集者だったのです。

読み方によっては、「出版社が加害者側に立って、被害者を黙らせようとした」とも取れてしまう。

ここに多くの人が強い怒りを感じているのは、当然のことだと思います。

 

2021年6月:交渉決裂

被害女性側は6月2日、追加条件を出しました。

「連載再開時には、休載理由が山本氏の逮捕であることを公表してほしい」

これに対し、山本氏側は6月4日に拒否。

「逮捕事実の公表は認められない」と。

こうして和解交渉は決裂し、事態は法廷へと移ることになります。

 

注目すべきは、被害女性が求めたのは莫大な賠償金ではなく、「事実の公表」だったという点です。

「本当のことを世の中に知ってほしい」。

この願いが退けられたことが、提訴の直接的なきっかけになったとみられています。

 

2022年7月:民事訴訟の提起

被害女性が札幌地裁に民事訴訟を提起。

約2000万円の損害賠償を求めました。

2022年10月31日:連載完全終了

提訴からわずか3ヶ月後、マンガワン・裏サンデーでの掲載が完全に終了。

翌11月1日、山本氏本人が公式アカウントで発表した内容は以下のようなものでした。

「読者の皆様に多大なご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」。

「現在も継続中の私的なトラブルによるもの」

「健康面や編集部との関係ではない」。

「小学館とマンガワン・裏サンデー編集部には本当に感謝しております」。

「担当編集者にもお世話になりっ放しでした」。

そして最後に「堕天作戦は甦ります」と締めくくっています。

 

当時のファンの反応を見返すと、「体調不良だったんだから仕方ない」「電子書籍で続くなら応援する」「小学館に感謝って優しいな」と、好意的な声が並んでいました。

誰一人として、この「私的トラブル」の正体が性加害事件だったとは思いもしなかった。

2026年の判決でそれが明らかになった今、「応援してた自分が馬鹿みたいだ」「小学館に騙されていた」という声がSNSに溢れているのは、無理もないことでしょう。

編集者は判決後も山本章一と交流していた

話はここで終わりません。

和解交渉に参加していた担当編集者・成田卓哉氏のその後の言動が、火に油を注ぐ形になっています。

連載終了時、成田氏は公式アカウントを山本氏に移譲した後も、「担当時に作成したバナー10枚を公開」「マンガワンの豆知識を放出」と、ファンへの発信を続けていました。

ここまでは担当編集者としての業務の範囲とも言えます。

 

問題はその後です。

2025年11月頃、成田氏は個人のSNSアカウントで、山本氏とのランチの様子を投稿していたことが確認されています。

「山本章一さんとランチしました」「トリュフのパスタを選んでました」といった内容で、親しげな交流を示す投稿が複数回行われていました。

これが判決後に掘り返され、SNSでは激しい批判が起きています。

「性加害の詳細を知った上で口止め交渉をしていた編集者が、その後も加害者と仲良くランチ?」

「被害者がPTSDで苦しんでいる間に、トリュフのパスタって何なんだ」。

感情的な反応と言ってしまえばそれまでですが、被害者の置かれた状況とのコントラストがここまで鮮明だと、怒りの声が上がるのは避けられないでしょう。

成田氏個人の行動が小学館の方針を反映しているのかどうかは不明です。

しかし、小学館は成田氏の言動についても一切コメントを出しておらず、この沈黙がさらに「組織として加害者側を守っている」という印象を強めてしまっています。

他の出版社ならどう対応したのか

小学館の対応が「異常」なのか、それとも「業界の慣行として仕方ないのか」。

これを判断するには、過去に他の出版社が作家の犯罪にどう対応したかを見るのが一番わかりやすいと思います。

集英社・アクタージュ事件(2020年)

週刊少年ジャンプで連載中だった『アクタージュ』の原作者が、強制わいせつ容疑で逮捕されたケースです。

集英社の対応は極めて迅速でした。

逮捕報道の即日に事実確認を行い、作画担当と協議の上、同週の合併号で連載を打ち切り。

コミックスの出荷停止、電子書籍の配信終了も即座に実施。

公式声明では「事件の内容と週刊少年ジャンプの社会的責任の大きさを深刻に受け止め」と明記し、出版社としての立場を明確にしています。

この対応は業界内外から「模範的」と高く評価されました。

 

集英社・島袋光年事件(2002年)

『世紀末リーダー伝たけし!』の作者・島袋光年が逮捕されたケースでは、即連載打ち切り、最新刊の発売中止、既刊全巻を絶版という、当時としては極めて厳しい対応が取られました。

20年以上前でもこの厳格さだったことを考えると、時代は関係なく出版社の姿勢が問われる問題だとわかります。

集英社・和月伸宏事件(2017年)

『るろうに剣心』の作者・和月伸宏が児童ポルノ所持で書類送検されたケースでは、即休載を発表。

作家本人が「深く反省している」とコメントを出し、約7ヶ月後に連載再開。

コミックスは継続販売という対応でしたが、それでも「即休載」というアクションは取っているわけです。

これらの事例と今回の小学館の対応を並べてみると、違いが際立ちます。

集英社は逮捕の時点で即座に動いている。

一方、小学館は2021年の時点で加害の詳細を把握していた可能性が高いにもかかわらず、150万円で被害者を黙らせて連載続行を狙った

それが失敗しても「私的トラブル」で誤魔化し、判決が出た2026年2月に至っても公式コメントを一切出していない。

この対応の差は、「出版社によってスタンスが違う」というレベルで済まされるものなのでしょうか。

「セクシー田中さん」事件との不気味な共通点

小学館の対応をめぐって、SNSで最も頻繁に引き合いに出されているのが、2024年の「セクシー田中さん」事件です。

この事件は、小学館の漫画作品がドラマ化された際の改変問題をめぐり、原作者の芦原妃名子氏がSNSで経緯を公表したことがきっかけでした。

その後、芦原氏は急死。

小学館は当初「社外への発信予定はない」というスタンスを取り、後日になってようやく調査報告書を公表しましたが、「原作者を守れなかった」「説明責任を果たしていない」として激しい批判を浴びました。

漫画家たちからも「著作者の権利を軽視している」という声が上がり、編集者一同が声明を出す事態にまで発展しています。

 

そして今回の山本章一事件。

SNSでは「セクシー田中さんの時とまったく同じパターン」という指摘が溢れています。

問題が起きても最初は沈黙する。

世論が大きくなってからようやく動く(あるいは動かない)。

被害者やクリエイターよりも、出版社側の利益やメンツを優先しているように見える。

この「体質」が2年経っても変わっていないことに、多くの人が失望しているわけです。

 

もちろん、二つの事件は性質が異なります。

セクシー田中さん事件はドラマ改変をめぐる権利問題であり、今回は作家の性犯罪に出版社がどう関わったかという問題。

しかし共通しているのは、「問題を認知していたにもかかわらず、透明性のある対応を取らなかった」という点です。

この共通点が、「また小学館か」という世論を形成しているのだと思います。

出版社は作家の犯罪をどこまで管理すべきなのか

ここでひとつ、公平を期すために触れておきたいことがあります。

法的に見ると、出版社が作家の私生活上の犯罪に対して直接的な責任を負うのは難しいのが現実です。

漫画家と出版社の関係は、基本的には委託契約です。

作家は個人事業主であり、出版社との間に雇用関係はありません。

したがって民法上の「使用者責任」は原則として適用されず、作家がプライベートで犯した犯罪に対して出版社が法的責任を問われるケースは極めて稀です。

 

しかし、法的責任と道義的責任は別の話でしょう。

出版社は作家の作品を世に出し、読者にお金を払ってもらうビジネスをしている。

その作家が重大な犯罪を犯していた場合、「知らなかった」で済むのか、「知っていたのに隠した」のは許されるのか

ここが今まさに問われている部分です。

今回の件で言えば、小学館の編集者はLINEグループで和解交渉に直接参加していました。

つまり「知らなかった」とは言い難い状況にある。

それでいて判決後も沈黙を続けているのは、読者に対する誠実さという観点で大きな疑問符がつくと言わざるを得ません。

弁護士や出版関係者からは「最低限、性犯罪歴がある作家の起用は避けるべき」「編集者が和解を仲介する行為自体が利益優先の典型」との指摘が出ています。

作家のフリーランス性が高い業界だからこそ、事前の身元確認や、問題発覚時の対応ガイドラインの整備が急務だという声は、今後ますます大きくなっていくのではないでしょうか。

SNSで急拡大する「小学館ボイコット」の動き

判決後のSNSでは、山本氏個人への怒りと並んで、小学館への批判が急速に広がっています

批判の中身を見ると、いくつかのパターンに分かれます。

最も多いのは「150万で口止めしようとした出版社って何なんだ」という、和解交渉の内容に対する怒り。

次に多いのが「セクシー田中さん事件のときと体質が変わっていない」という失望。

そして「読者も騙されていた。私たちも被害者だ」という、ファンとしての裏切られた感情。

成田氏と山本氏のランチ投稿が掘り返されて拡散されていることも、批判の炎をさらに大きくしています。

 

一方で、「小学館の全作品をボイコットするのは、他の作家に迷惑がかかるのでは」という冷静な声も一定数あります。

これはもっともな指摘で、小学館には何の落ち度もない多くの作家が作品を連載しています。

怒りの矛先が広がりすぎることへの懸念は、忘れてはいけない視点でしょう。

ただ、だからこそ小学館自身が公式見解を出して線引きをする必要があるのではないかとも思うのです。

沈黙が続けば続くほど、「出版社全体の問題」として批判が拡大してしまうリスクがあるのだから。

 

出版業界に再発防止の仕組みはあるのか

最後に、業界全体の話に少し広げさせてください。

今回の事件を受けて、出版業界で再発防止に向けた具体的な動きが始まっているかというと、残念ながら現時点では目立った動きは確認できていません。

一部の漫画家や編集者がSNS上で「作家の犯罪歴データベースの共有」「起用前の身元確認の義務化」「被害者を優先した和解ガイドラインの策定」などを提言していますが、業界団体や出版社からの公式な対応はまだ出てきていない状況です。

海外に目を向けると、アメリカのMarvelやDCコミックスなどでは、性加害歴が判明した時点で即座に契約解除・作品の抹消という対応が取られるケースが一般的です。

ヨーロッパの出版社でも同様の厳格な基準が設けられている。

日本の出版業界は作家のフリーランス性が高く、管理が難しいという事情はあるにせよ、「性犯罪をした作家の作品をどう扱うか」という基準すら存在しない現状は、やはり問題と言わざるを得ないでしょう。

教育現場では2021年の法改正で性犯罪歴のあるデータベースが整備されました。

運用にはまだ課題がありますが、少なくとも「仕組みを作ろう」という動きは始まっています。

出版業界にも同じような議論が必要な時期に来ているのかもしれません。

小学館の沈黙はいつまで続くのか

2026年2月26日現在、小学館は本件について公式コメントを一切出していません

成田卓哉氏の関与について、和解交渉の内容について、連載終了時の説明と実態の乖離について、そしてファンや被害者に対する今後の姿勢について。

何ひとつ、語られていない状態です。

山本氏側には控訴の可能性があり、事態はまだ流動的ではあります。

しかし、「係争中だから答えられない」という理由で沈黙するには、すでに出ている情報が多すぎるのではないでしょうか。

LINEグループでの交渉内容、編集者の関与、連載終了時の説明と事実のギャップ――これらはすでに公知の情報として広まっています。

今さら「何も知りませんでした」とは言えないところまで来ている。

 

小学館がこれからどのような対応を取るのか。

公式見解を出すのか、それともこのまま沈黙を貫くのか。

その選択が、この出版社が読者と被害者に対してどのような姿勢で向き合うつもりなのかを、はっきりと示すことになるでしょう。

この記事で追いかけてきた時系列を振り返ると、ひとつの構図が浮かび上がります。

  • 2020年、作家が犯罪で身柄を拘束された可能性がある時期に「体調不良」で休載。
  • 2021年、編集者が被害者との和解テーブルにつき、150万円での口止めと連載再開を提案。
  • 2022年、提訴後に「私的トラブル」で連載終了。ファンには真相を隠したまま。
  • 2025年、編集者は加害者と変わらず親しい交流を続けている。
  • 2026年、判決が出ても公式コメントなし。

この一連の流れを「知らなかった」「関係ない」で通すことが、果たして可能なのか

私には、とてもそうは思えません。

被害女性は今も後遺症と闘い続けています。

出版社が果たすべき責任とは何なのか、業界全体で真剣に考えるべき時が来ているのだと思います。

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