「大阪万博が黒字」と聞いて、素直に「よかった」と思えたでしょうか?
SNSではなぜかザワつき、建設費や税金の話にまで広がる“違和感の声”が止まりません。
一方で、会場をつくった下請け業者への未払い問題も取り沙汰され、「黒字ならまずそこじゃない?」という指摘も。
今回の“黒字報道”は何を伝え、何を伝えていないのか。
この記事では、数字の表面では見えない構造と、受け手側のモヤモヤの正体を、静かに紐解いていきます。
「大阪万博、280億円の黒字見込み!」
そんなニュースを見て「えっ?」と声が出た人、けっこう多かったのではないでしょうか。
SNSでも「黒字って…本当に?」と首をかしげる声があふれていました。
まず結論から言うと、これは本当の黒字です。
ただし、「運営費に限っては」という条件つき。
運営費とは、万博を6か月間開催するための人件費やシャトルバス運行、会場管理、イベント実施などにかかるお金のこと。
大阪・関西万博ではこの運営費として約1,160億円が予算に組まれていました。
一方で、入場券の売上が想定を超えて好調。
約2,207万枚が売れ、1,169億円の収入に。
さらに、ミャクミャクグッズや飲食販売など物販系の収入が約220億円。
これらを合計すると、収入は約1,389億円となります。
そして支出が約1,110億円だったため、最終的に約280億円の黒字になる見通しです(2025年10月7日、日本国際博覧会協会発表)。
なので、たしかに運営費という区切りでは黒字。
ここまでは事実であり、誇張もありません。
実際、X(旧Twitter)でもこんな声があがっています。
万博が「黒字で大成功」って言うなら、まずは未払いの下請け業者さんにちゃんと代金を払ってあげてほしい――そんな声がXでも上がっています。
会場が完成したのは現場の人たちの努力あってこそ。
もし彼らがいなければ、そもそも万博は開けなかった。
その「功労者」にしわ寄せがいく状況で、本当に“成功”って言えるのでしょうか?
というわけで次は、その「建設費はなぜ除外されているのか?」という素朴な疑問に答えていきましょう。
ここが理解できると、「黒字」の意味合いがぐっとクリアになります。
「黒字って聞いたけど、建設費はどこ行ったの?」
そんな疑問、自然だと思います。
でも実は、この「別会計」というやり方、形式上はまったく正しいんです。
会計のルールとしても、ある意味スタンダード。
だからこそ余計にわかりにくいんですよね。
大阪万博の収支には、ざっくり2種類の“財布”があると考えてください。
ひとつは、運営費の財布。
これは、万博協会が管理しているお金で、チケット収入やグッズ売上のほか、国・自治体・経済界からの負担金(いわゆる補助金)が含まれます。
もうひとつは、建設費やインフラ整備のための“公的・民間負担の財布”。
こちらは、国・大阪府市・経済界が3分の1ずつ出し合ってまかなっているものです。
そして黒字とされたのは、あくまで前者の「運営費の財布」の話。
建設費や地下鉄整備などの支出は、協会の会計には入っていません。
関係者側の論理としてはこうです。
建設費やインフラは「一時的な支出」ではなく、「将来的な都市の資産形成」。
駅や道路は万博が終わっても使われるし、残る施設が観光資源になるなら、長期的には回収できる投資だという考え方。
たとえば「大屋根リング」も一部は展望施設として保存される方向で検討されています(※解体が基本方針)。
こうした“残る部分”だけでも、観光や再開発に生かせれば赤字ではない、というわけです。
けれどSNSでは、こんな素朴な声が絶えません。
「駅ができても地元住民は使わないし」
「維持費もこっち持ちでしょ?」
「投資って言うけど、得するのは誰なんだろう?」
まさに、モヤモヤの本質。
さらに、*収支の“見せ方”にも違和感があるという人は多いです。
売上は「入場券+グッズ+飲食+負担金」でひとまとめにして、「収入1,389億円!」とアピール。
一方で、支出は運営費だけを切り取って「1,110億円で済んだ!」と出してくる。
その結果、「280億円の黒字!」という印象が前面に出る。
もちろん、これは嘘ではありません。
でも、肝心の建設費やインフラ整備費、さらには解体費や警備費は見えにくいまま。
このような「会計の透明性不足」が、「なんか納得できないな…」という感覚を生むのです。
つまり今の状況は、制度としては正しいけれど、納税者の肌感覚とはズレているということ。
特に“最終的な支払いは税金”という現実がある以上、その違和感は簡単には消えないでしょう。
では、なぜこうした“モヤモヤ”が広がるのか?
次はその核心、「黒字報道への違和感」について考えていきましょう。
まず、報道の出し方に少し偏りがあったことは否定できません。
「280億円の黒字!」という見出しが先に目に飛び込んできます。
もちろん、運営費ベースの黒字は事実です。
けれどその裏には、次のような支出が存在しています。
こうした金額も万博の実現には欠かせないものでしたが、これらの多くが「運営費の会計とは別」とされています。
「黒字って聞いたけど、これ全部除外しての話なら、それって黒字なの?」
このモヤモヤ、無理もないですよね。
納税者視点からの素朴な声は
「税金で建てた会場を使って、運営だけ黒字って…それ自慢することか?」
「建設費は別ですって、それこそ都合のいい話じゃん」
「チケット代は回収できたかもしれんけど、あのリング代は?」
実際の会計構造では、支出・収入の区分はルールに則っています。
しかし、運営費の“黒字”にだけ光を当てて、全体の負担構造が語られないままでは、どうしても納得感は得られません。
この違和感の背景にあるのは、信頼の欠如。
こうした心理が、情報の受け手にモヤモヤを残すのです。
さらに問題をややこしくしているのが、収入の見せ方。
黒字報道で使われている「収入約1,389億円」には、入場券やグッズ売上に加えて、国・自治体・経済界からの負担金(補助金)も含まれています。
でも支出の方は、**建設費など巨額な公的投資を省いた“運営費だけ”**を取り上げている。
このアンバランスな構図が、
「黒字って言ってるけど、ホントのところどうなの?」
という印象を強めてしまいます。
ここで改めて、黒字という言葉の背景を整理してみましょう。
運営費の財布はたしかに黒字。
でも建設費などを担っているのは、税金と民間が一緒に出す“もう一つの財布”です。
この「運営財布 vs 税金負担財布」の構図を知らないと、どうしても印象だけが先行してしまいます。
最終的に、私たちが感じる“違和感”の正体とは、「数字の真偽」ではなく、「情報の見せ方」と「負担の帰着」にあるのかもしれません。
とくに、負担の最終的な行き先が納税者自身だと考えると、やっぱり「もう少し丁寧に説明してほしい」という気持ちになりますよね。
だからこそ――
大阪万博の黒字は嘘?建設費を抜いた計算に違和感の声という問いに対して、
私たちはこう答えるべきかもしれません。
「嘘ではない。でも、誤解が広がるような伝え方には課題がある」
その違和感を言葉にすることこそが、これからの公共イベントや税金の使い方に対して、
より健全な目を向ける第一歩になるのではないでしょうか。
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